2015年9月10日木曜日

大阪酒塾11年目に向けて、箱部 聡 塾頭にインタビューしました!

2015年大阪酒塾は10周年を迎え、今年27byの酒造りを前にして11周年に入ろうとしています。
そこで、発起人のリーダである箱部 聡 塾頭に、新たな10年に向けて、現状と抱負をインタビューしました。
 
 
 
 


箱部塾長の経営する店舗で、大阪酒塾の事務局でもある「たこ茶屋」。全国屈指の活けだこ料理専門店であり、究極の美酒を揃える割烹として、知る人ぞ知る名店です。
たこ茶屋には、著名な蔵元や杜氏が入れ代わり立ち代わりに訪れます。また、海外からも日本酒を求めるバイヤーや専門家たちが来店し、珍しい活けたこ料理に舌つづみを打ちながら、箱部塾長に美酒の目利き指南を請うこともあります。
それでは、さっそくインタビューを!




筆者 (日本酒ジャーナリスト:高槻 新士)
「10周年を迎え、現在の大阪酒塾について、ご感想をお願いします」

箱部
「おかげさまで、会員様は120名ほどになりました。定例会やイベントにも、50名前後の方々が常時ご参加くださっています。スタートした当初に比べ、酒塾の学びや会員様ご自身の努力・体験で日本酒への造詣が深まり、レベルの高い方が増えました。飲み方ひとつ取っても、温度によって感じ分けたり、グラスにこだわったりと、深酒せず上手に飲む方が多いですね。当初は、グデングデンまで飲んでた方がたくさんいらしたのですが(笑)。ヨッパライを作らず、日本酒嗜好を上手にリードするメンバーを育成することがテーマでしたから、まさに、そうなってきたと思います」

筆者
「蔵元様とのネットワークも、ずいぶん広く、深くなったのでは?」

箱部
「そうですね。たこ茶屋には常時60種類ほどの日本酒がありますが、そのほとんどは大阪酒塾と御縁をつないでくださっています。また、多くの蔵元様が、この10年間は相当な変革期だったのではないでしょうか。業績の見直し、再建、杜氏や蔵人が世代的に若返りしたりと、新たな時代を迎えた蔵元が多かったと思います。大阪酒塾では、そういった蔵元様も訪問したり、東日本大震災への募金活動などで、より深い御縁を結びました」


筆者
「ところで、現状の日本酒の嗜好性について、思うところは? 」

箱部
「確かに、甘い酒が増えているとは思いますが、品質は相当良くなっていますね。ただ、完全発酵の酒造りを簡単に口にする蔵元が増えているのは、いかがなものかと思います。基本的に、完全発酵するのは、非常に難しいはずです。また、食とのバランスから多種多様な酒が登場していますが、やはり、日本酒本来の美味しさは旨味と酸のバランスだと思いますよ」

筆者
「たこ茶屋の冷蔵庫には、旨味の濃い熟成した酒もあるそうですが、それも大阪酒塾の方向性の一つでしょうか?」

箱部
「日本人は、まだ熟成した酒の美味しさに疎いんです。むしろ、私の店では欧米人の方が日本酒の古酒を飲むし、感動していますよ。彼らは日本酒のひねた匂いを、熟成したワインや貴腐ワインに似ていると言います。シャトー・ディケムの年代物は、その典型でしょう。そういった酒と活けだこを楽しむセンスは、まだ日本人には少ないですね。この嗜好性も、大阪酒塾の一つの学びだと思います」



筆者
「なるほど、やはり旨味と酸味がポイントなのですね。それは以前にも、箱部塾頭が滋賀県の”不老泉”を称賛される理由に聞きました。となると、本来の日本酒の旨味や風味を生かす無濾過も大きなポイントですか?」

箱部
「はい、信越地区の淡麗辛口の酒は活性炭濾過が定番ですが、これを続けている内は、本来の旨味は損なわれますね。ただ、その要因には地域の食文化も影響しています。新潟県の方が西日本の酒は「甘ったるい」と言えば、広島の方は北日本の淡麗辛口を「うすっ辛い」と言いますよ。酒の旨味は、地域性に左右されるわけです」

筆者
「なるほど。大阪酒塾としては、無濾過で本来の旨味と酸味のバランスがいい、そして、欲を言えば完全発酵の酒を推薦するわけですね」

箱部
「とは言え、なかなかその条件を満たす酒にはめぐり逢えませんが(笑) でも、これからも本物の日本酒への情熱を、会員の皆様と持ち続けながら、楽しく充実した大阪酒塾を継続して参ります」



インタビューが進むうち、気づけば、客席はそんな美酒を求めるゲストで満席。
ますます大阪酒塾の活動に期待が高まる、箱部塾頭インタビューでした!